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◆ 繁殖活動 ◆

●コロニー

 通常(つうじょう)、ペンギンのコロニーを「ルッカリー」と呼ぶが、本来(ほんらい)はミヤマガラス(ペンギンとは全くちがうカラス科の鳥)の集団繁殖地(しゅうだんはんしょくち)に対する呼び名である。
  キガシラとフィヨルドランド以外の全ペンギンは繁殖時にコロニーを形成する。
  コロニーの形態や規模(きぼ)は、種や場所により様々である。
  エンペラーやキングは巣を作らないが、繁殖コロニーは形成する。(→エンペラーペンギンの抱卵

テレビや写真集ではペンギンのコロニー(繁殖地)をきれいに紹介してますけどね、実際は死屍累々(ししるいるい)の世界なんですよ。トウゾクカモメに食い荒らされた卵の残骸(ざんがい)。食いちぎられたヒナの頭や足。餓死(がし)したり凍死(とうし)したりした成鳥の死骸(しがい)。そういったものがごろごろしているんです。
(上田一生著「ペンギンの世界」に掲載の青柳昌宏氏の言葉)


●コロニーへの帰還(きかん)

 多くのペンギンは、つがいが長く維持(いじ)され、毎年同じ巣に戻ってきて繁殖する。
  巣を持たないキング、エンペラーも同じ営巣地(えいそうち)に戻ってくる。
オスが最初に営巣地に戻り、メスの戻りを待つ。
  コロニーにて、オスが前回のメスとめぐり会えないか、待ちくたびれたときは新たな相手を探すことになる。

 コロニーでは、ペンギン同志のケンカが多発するが、ほとんどは繁殖経験(はんしょくけいけん)のない若い個体によるものである。
  産卵(さんらん)後もケンカのタネは多く、見さかいをなくしたペンギン同志が、あちこち追いかけ回り、たたき合い、あげくに我を失って、他人の巣をふみ荒らしたり、卵をけちらしたり踏みつぶしたり、とういう状態がくり広げられたりする。


●恍惚(こうこつ)のディスプレイ (Ecstaic Vacalization)

 繁殖期(はんしょくき)のはじめ頃、コロニーでひときわ盛んに行われる。
エンペラーを除くすべての種で見られる。

 恍惚のディスプレイは、自分の巣を確保(かくほ)したオスが行う、最初の行動である。
ペンギンはつがいの維持率(いじりつ)は高いが、それは陸の上のみで、人生の3分の2を過ごす海では、家族関係はバラバラになっている。
  繁殖のために戻ってきたコロニーで、前回の相手と再会(さいかい)するため、はたまた独身者(どくしんしゃ)は新妻(にいずま)を得るために高らかに恍惚のディスプレイによって「男」を宣伝(せんでん)しているのである。

 エンペラーペンギンは恍惚のディスプレイは行わないが、他のすべてのペンギンは直立して首を空に向かって伸ばす。

恍惚のディスプレイ

ディスプレイとは、求愛(きゅうあい)、攻撃(こうげき)、確認など、相手とのコミュニケーション時の「動作」+「鳴き方」を指す。


●交尾(こうび)の受け入れ

 ペンギンにおいても、交尾はメスの主導(しゅどう)である。相手を選びリードするのはメスである。
  南極ではメスは、恍惚のディスプレーで鳴き声の低いオスを選ぶ傾向(けいこう)がある。声の低い方が、皮下脂肪(ひかしぼう)も厚く、絶食(ぜっしょく)にも良く耐え、しっかりと抱卵(ほうらん)ができるからか?

 交尾は、メスが腹這い(はらばい)になり、オスが背中に飛び乗り、あっという間に終わる。
交尾が終わった直後のメスは、背中の腰(こし)あたりがオスの足跡(あしあと)でよごれており、「フロックコートの裾(すそ)のよごれ」と呼ばれる。


●巣作りと抱卵

 ほとんどのペンギンは巣を作り、そこで親が上から乗るようにして卵をあたためる。

 アデリーペンギンの巣作りは、小石を積み重ねて作るが、この時に、他人の巣の石を盗む光景(こうけい)がよく見られる。
  相手が巣にいるときは、何気なく近づき、目が合うと素知らぬ(そちらぬ)顔をしてトボケる。
そして、スキがあると石をくわえて一目散に逃げる。


 キングとエンペラーは、腹とふしょ骨の間に卵をはさんで暖める。これを見て、オーストラリアの有袋類(ゆうたいるい)のように、卵を暖める袋を持っていると誤解(ごかい)されたりもした。

キングペンギンの抱卵


●卵の蹴り出し(けりだし)

 ロイヤルとシュレーターにおいて、親による第一卵の「蹴り出し」という行動が観察されることがある。
  積極的(せっきょくてき)に「蹴り出されて」いるが、理由はまだ良くわかっていない。

 かつて、同じ種のなかまで殺し合うのは、人間だけに見られる愚考(ぐこう)である、と言われていた。 しかし、サルの「子殺し」行動が世界ではじめて観察されたことで様相(ようそう)が一変したことがある。
  観察報告(かんさつほうこく)したのは、日本の大学院の研究生だったのだが、それを境に堰(せき)を切ったように世界各地で似たような、動物の同種間の殺し合い行動が確認されるようになった。

もちろん、それ以前にそういう行動が皆無(かいむ)だったと言うことはありえず、「殺し合うのは人間だけである」という先入観が観察者の目をくもらせていたのだった。
 サルの場合の子殺し行動は、育児(いくじ)でオスザルを相手にしないメスに対して、再び交尾行動を受け入れさせるために、そのメスの子ザルを殺すというものだ。
 自分自身の子供を殺すという行動は、ネコにも見られるし、多くは生まれて間も無い子供を見られた親が、子どもを食べてしまうというもの。子どもの姿を消すことで相手から守るという、母性本能が極度(きょくど)に達した状態とも言われている。

 ペンギンの卵の蹴り出しは、このようなことではないらしく、まったくもって不明である。


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