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◆ なぜ空を飛ぶのをやめたのか? ◆

 もともと飛翔能力(ひしょうのうりょく)を持っていた鳥類が、空中を飛ぶという優れた(すぐれた)能力をすてる場合、飛べないことが有利(ゆうり)なためにそのように進化していったのではなく、飛翔能力を放棄(ほうき)することで得られる利点の方が大きいからと考えられる。

 多くの鳥では、空中飛翔に関係する筋肉や骨は、全体重の20~25%に達する。飛翔筋(ひしょうきん)だけでも17%ほどである。
しかも、それを維持(いじ)するのにも莫大(ばくだい)なエネルギーが必要となる。鳥類が、子育て中でなくても四六時中エサをとっているのはそのためだ。

 飛翔能力を捨てて、その器官(きかん)を消失(しょうしつ)、減少(げんしょう)させれば、エネルギーの必要量(しつようりょう)はかなり削減(さくげん)できる。クイナやキウイなどの島に住む飛べない鳥は、走ることにも水中をもぐることにも特化(とっか)していないのに飛ばなくなった。それは捕食者(ほしょくしゃ)から逃げる必要がなくなり、莫大(ばくだい)なエネルギーをつかう飛ぶ能力をすてたと考えてよいでしょう。
  飛翔の有利な点は、外敵(がいてき)からにげるという意味も大きいのですが、ペンギンの場合も陸上では飛んで逃げなければならないような外敵が皆無に近い(人間に会うまでは)。もちろんヒナの時には他の鳥類とおなじで外敵は多いけど、ヒナの段階で飛べる鳥類などはいません。


 ペンギンでも、成鳥になるまでの死亡率(しぼうりつ)は他の鳥類と同じく高いのです。そのかわり、いったん成鳥になったペンギンの死亡率は、特に大型種(おおがたしゅ)では非常に低く無敵(むてき)に近い(あくまで陸上では)。南半球の陸上では天敵(てんてき)となる哺乳類(ほにゅうるい)が少なかったことが、空を飛ぶことをやめても繁栄(はんえい)できた理由のひとつでしょう。

 それに加えて、寒い地で生きるペンギンが多いのですが、そのためにあつい脂肪層(しぼうそう)をまとっています。飛ぶのをやめたことで体重を制限(せいげん)する必要もなく、脂肪層をためることができます。そして水中を飛ぶ場合には、飛ぶする鳥のように中空(ちゅうくう)の骨格(こっかく)ではういてしまうし、水圧(すいあつ)に負けてしまいます。そのためペンギンの骨はかたくぎっしりとつまっています。

 また他には類を見ない、水中でヒレとなるフリッパーにつばさを変化させました。あらゆる点でペンギンは水中生活に特化した鳥類となりました。潜水能力(せんすいのうりょく:深く長くもぐる能力)、水中でのスピード、どれをとってもペンギンは地球上の鳥類の中では驚異的(きょういてき)に群をぬいているのです。

 飛べる鳥が飛ばなくなる利点として、飛翔能力を維持(いじ)するための重装備(じゅうそうび)の骨格や筋肉、そしてエネルギーの保持(ほじ)を放棄(ほうき)できると書きましたが、ペンギンは空は飛ばないかわりに、より困難(こんなん)な水中飛行をえらんだため、同じように、いやそれ以上に身体を重装備にしてエネルギーも保持する必要があります。ペンギンが大食漢(たいしょくかん)なのもそのためです。やはりペンギンは飛んでいるのですね。


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