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◆ 共同保育所(きょうどうほいくしょ) 「クレイシ」 ◆

 集団繁殖(しゅうだんはんしょく)をする鳥類の中には、ヒナがある程度育つと、それぞれの巣から離れて、ヒナだけの生育(せいいく)集団「クレイシ」を作るものがある。
  全鳥類約9000種のうち、10種ほどに見られる形態(けいたい)である。
  面白いことに、それらはいずれも、 水に縁のある生活をしている鳥類で、ペンギン、アジサシ、フラミンゴの仲間である。

 ほとんどのペンギンでは、育雛(いくすう)期間は、二つの段階から成っている。

 どちらかの親に常に守られている「警護期(けいごき)と、ヒナだけがコロニーに残されてクレイシを形成する「クレイシ期」である。
  クレイシ期には、両方の親が採餌(さいじ)に出かけている。

 規模(きぼ)の大小や形態の差はあるが、クレイシを作るのは、エンペラー、アデリー、イワトビ、キガシラ属たちで、巣穴(すあな)で繁殖する形態のコガタやフンボルト属は、まったくクレイシを作らない。(より気温の高い温帯(おんたい)に住むイワトビ属の仲間もクレイシは作らない)


クレイシについて、最も良く研究されているアデリーペンギンの場合で言うと、クレイシには、大きく3つの機能(きのう)があると見られる。

  1. 集団の体温調節機能(たいおんちょうせつきのう)
  2. 捕食者(ほしょくしゃ)からの集団での防御(ぼうぎょ)
  3. 弱いヒナの淘汰 (とうた)
  1. は、冬の南極で親からの保温が無い状態なので、密集(みっしゅう)して全体で体温を維持(いじ)し合う。 しかし、寒くない地域でもクレイシを形成するので、この説明ではおかしいこともある。
  2. は、ヒナだけの集団でも、やはり捕食者は容易には近づけない。
  3. は、親の保護が無い状態では、捕食者からの脅威(きょうい)があり、その中で生きのびた強い固体をフルイにかける役割も担って(になって)いると見られる。

 クレイシ期になると、ヒナはヒナだけで集団に固まっているが、給餌(きゅうじ)に戻ってきた親と子はどうやってお互いを見分けるのか?

 親は海からコロニーに戻ってくると、ヒナを呼ぶ鳴き声を発する。
それに、その親鳥のヒナが反応して給餌が成立する。(直接給餌)
  クレイシ期が進むと、親は給餌の際、ヒナをクレイシから連れ出してエサを与える。(連れ出し給餌)
  さらに時期が進むと、親はクレイシの外からヒナを呼び出して、給餌するようになる。(呼び出し給餌)
この場合でもヒナをまちがえることはない。
他のヒナには決して給餌することはなく、親を失ったヒナは餓死(がし)する運命にある。
  呼び出し給餌は、次第にその距離が長くなり、海岸にまで呼び出して海に慣(な)れさせる種もある。

 連れ出し給餌の際、通常その距離は数十メートルになり、ヒナは一人でクレイシを離れ、親の呼ぶ場所まで歩いていき、再び一人でクレイシまで戻る。
  天敵(てんてき)におそわれる危険が、最も大きい時である。
戻るとき、そばについてガードしている個体がいることがある。
青柳昌宏博士の観察では、非繁殖個体(ひ・はんしょくこたい)がヒナの用心棒(ようじんぼう)になっているとの説を発表したが、矛盾(むじゅん)する観察も多く、否定意見が多い。

  クレイシ期も最後になると、親は給餌せず戻らなくなる。
換羽(かんう)を終えたヒナは、空腹にたえかねて海へとエサとりに出て、巣立ちとなる。

ペンギンの給餌3形態

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